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ちょっと本を作っています

ちょっと本を作っています

すぐそこの田舎暮らし

田舎暮らし、里山、アウトドア、自然、故郷、農家
隠居の前口上

別掲の『負けてたまるか』を書いた頃は、出版社数社の雇われ社長でした。

(ゴメン、「負けてたまるか」は今は公開していません)

それから3年後、ベストセラー作りに疲れ果てた私は里山に転がり込みました。

ここに登場する二人の人物は『負けてたまるか』にも登場しています。

私のスポンサー『仏の中村』は私の債務を収得した街金のオーナーです。

そして一緒に住んだ『幸ちゃん』こそ、私のところへ取立てに来た街金の社長です。

私の山里暮らしでは、コック長兼運転手兼雑用係を務めてくれました。

やっぱりヘンですよね、私。まあ、図々しさだけは誰にも負けません。

主客転倒どころか、みんな私のためにいろいろと気を使ってくれました。

この里山暮らしの後、家族とも別れ独りでの生活を選択することになります。

ここに書いたのは4~5年ほど前の私の生活です。





千葉・房総は、田舎暮し天国
すぐそこの田舎暮し
黒い子猫の棲む里にて


プロローグ 想い出の欠けら

田舎暮しに憧れていた。


京都の街中で生まれ、育ったところは大阪の郊外。

小学生のころは田んぼもあった。

うず高く積み上げられた麦わらを掻き分け、秘密基地を造った。

小川もあり、沼や林もあり、トンボや蝶が遊び友達だった。

夏の夜には、蛍が飛びかっていた。

青い海もあった。ハゼを釣り、ヤスで蟹やカレイを追いかけた。


中学生になったころには、田んぼは住宅街になり、

ため池だった沼地は埋め立てられて、公団の五階建て団地が広がった。

土ぼこりの立つデコボコ道はなくなり、

肥溜めや家畜小屋のムっとするような臭いもなくなったが、

もうどこにも、蛍はいない。


海さえも埋め立てられて、

子供の足でも、五分も歩けば広がっていた白い砂浜も、

ハゼを釣った堤防も、

みんなでかくれんぼや、花火や、セミ捕りをした松林も、

一瞬にして、消えてしまった。

工場の立ち並ぶ埋立地を、クルマで十分も走れば海は広がっているが、

もう俺たちの海ではない。


高校を卒業して、進学のため上京。

時あたかも、学生運動のうねりが押し寄せた。

そして就職。

ジーパンをスーツに着替え、ラッシュの波に揉まれながら、

ビルが次々と建ち並ぶ様を、車窓から目で追っていた。

いっぱしの業界人を気取り、いつの間にか話す言葉も東京言葉になっていた。


都心のアパートに住み、

結婚して子供が出来たころには、公団の2DKに移り住んだ。

やがて郊外型マンションへ。

茨城県の片田舎で育ったはずの女房も、

ゴキブリ一匹で「キャーキャー」騒いでいる。


ふと、振り返ったとき、小さいころの風景が懐かしくなった。

でも見えない。かすかにさえも、思い出せない。

砂で作ったお城のように、打ち寄せる波にさらわれ、

すべてが時の彼方へ去ってしまった。


どこかに想い出の欠けらが落ちていないだろうか?

田舎暮しへの憧れが、ますます強くなる。



第一章 先住民/黒猫のタンゴにつづく





【項目紹介と各章へのリンクを用意しました】

第一章 先住民/黒猫の『タンゴ』

■『佐倉』の旧家へ転がり込む
■俺も変だけど、みんな変だよ
■これは、最高の遊び場だ
■幸ちゃんの天敵『タンゴ』


第二章 房総のチベットに、山里「コンタ」発見

■野生の鹿を喰う
■鹿の棲む里へ
■山並の、さらにまた奥の『山里』
■房総のチベット


第三章 知らないってことは

■幸ちゃんハシゴに登る
■砂嵐の洗礼
■命の水、生活の水
■あれ、タヌキって、どんな顔つき
■里山には食い物が一杯                
■鉄棒と竹の子


第四章 竹の子で仲間を釣り上げる

■中年男、童心に戻る
■焚き火三昧
■五十男、マルコメになる
■『百聞は一見にしかず』なのだ
■ちょっぴり、田舎暮しのガイド気分


第五章 森の天使の小さな落し物

■小鳥のヒナを拾った
■よかった、生きていた
■目が離せない
■我がまま、ピー助
■突然の出来事


第六章 小悪魔『チビクロ』参上

■俺だけの散歩道
■いつもと同じ朝なのに
■チビクロ砦
■チビクロ、戦闘態勢に入れり


第七章 チビクロ砦とチビクロ王国

■天敵はお婆ちゃん
■チビクロ、ジャングル大帝になる


第八章 まったくもう、田舎暮しってヤツは

■みんな揃って、PTA
■狭いんだよ、世界が
■俺たちは進駐軍なのだ


第九章 チビクロ、チビコゲへ変身中

■隣り合わせの大都会
■ちょっぴり大人になったチビクロ
■息子に叱られた
■ブランド品を着て、野良仕事


第十章 隠れビーチで日向ぼっこ

■清ちゃんのプライベートビーチ
■突然、南海のビーチが現れた
■ビキニに釣られて『御宿』へ
■小母さん。小母さんがみんなを幸せにしてるんだよ


第十一章 チビクロ、何処へ行こうか

■静かに毎日が過ぎてゆく
■トンちゃん、どうするの


第十二章 何で、お前まで行ってしまうの

■こりゃ、大儲けできるかも
■チビクロの様子が、おかしい
■チビ、どこへ行った

 
第十三章 ムジナ(アナグマ)に見送られ、街へ帰る

■秘密基地を作ろう
■地図もない、道もない、何にもない
■そしてムジナが現れた


エピローグ みんなで遊ぼうよ。そして言い訳


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